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仙道緑(1000円の男)
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    ■2006/10/06(金) ユイ その7

    足が痺れたと小さく言ったユイさんは、少し躊躇しながら僕の手を握り、もう片方の手を地に着けて片方の足を伸ばして、立ち上がろうとした。
    その時、僕はやっと理解をした。一時的な怪我か、先天的なものかはわからないが、ユイさんは足が少し悪いのだ。ジーンズから覗くくるぶしにはギブスのようなものは見えなかったが、体重からかばうような動作が、どこの負担を避けているかを浮き彫りにしていた。
    僕の不躾な視線に気付いたのだろう、ユイさんは僕の顔を見るのを避けるように、うつむきながら立ち上がった。 
    「全然、気付かなかったよ。なにか不快な思いをさせてたら、ごめんね。」
    肩を抱きながら言った僕の言葉をかき消すように、ユイさんは頭を振った。

    「いいの。慣れてるから。変なものは変だものね。」
    その台詞から、足への障害は長いものなのだと知る。正しい言葉を捜そうという気持ちすら、もう間違いなのかもしれない。僕は目を瞑って、ユイさんの頭に触れることが精一杯だった。大人が、頑張った子供を撫でるように、僕からユイさんへ少しでも送ることのできるエールのつもりで、頭を撫で続ける。
    「今日、飲み会があって・・・好きな人がいたんだけどね。」
    何か相談に乗れるかもしれない。そんな気持ちで、さっきまで僕が聞いていた話の続きだろう。ユイさんは相変わらず目を合わせずに語り始めた。
    「乾杯の時に・・・上手に立てなくて。そうしたら・・・。」
    段々とか細くなっていくユイさんのエピソードを、僕はそれ以上聞けなかった。腰を抱いて両手で締め付けるようにゆっくりとユイさんの体を抱きとめると、「はぁ」と、僕のスーツに湿った吐息が吹きかけられた。
    「うん、可愛そうに。大変だったね。」
    なるべく多くの言葉をユイさんの耳に入れたくて、思いつくままの言葉を語りかける。さっきまで気丈に振舞っていたユイさんは、抱きしめてみると驚くほど小さく、細い肩を震わせる女の子だった。

    「周りの人は大丈夫って言って・・・たけど・・・。」
    「やっぱり・・・やだ・・・よう・・・。」
    振り絞るようにそう言い終わった途端、堰を切ったようにユイさんの喉から嗚咽が漏れ出した。
    自分のしていること。何かを出来るのではないかと、思ったこと。それが正しかったのか、余計にユイさんの気持ちをかき乱しただけではないのか。それを「後で考えること」に刻んだ僕は、体重を預けてくるユイさんを心配させまいと、少しだけ足を開いて半身になり、ユイさんから少しでも体を離さないことにだけに専念をした。

    ユイさんが泣き続けていたのは5分ほどだろうか?ユイさんの脇の下に手を通して、僕はユイさんの(物理的な)支えになることにのみ専念をした。はたから見た人には、僕達は甘いダンスを踊っているかのようにも見えたかもしれない。
    「ありがとう。」
    少しだけ咳をしたユイさんは、自分の胸に手をあて、振動を収めるように深呼吸して、言った。
    「かえって・・・辛い思いをさせちゃったみたい。」
    そう、僕が言うと、もう一度ユイさんは顔を歪ませる。
    「やめて、そんな風に、思わないで。ますます・・・悲しくなっちゃう。」
    「うん・・・。わかった。」
    まわした腕で背中をポンポンと叩くと、ユイさんはそれを合図にしたかのように体を離した。
    「こんなこと、友達にも話せないし。スッキリしたよ。」
    そう笑いながら、目尻から涙が零れた。既に出来た涙の痕を這うように零れる涙を、僕が人差し指ですくおうとするのを、ユイさんの手がそっと止めた。
    「お願いが、あるの。聞いてくれる・・・?」
    「うん、もちろん。」
    「これから、私は改札を通って、家に帰ろうと思います。」
    固い意志を表明するように、ユイさんは少し強い口調で話した。
    「うん。」
    僕は、ただ、頷く。
    「それでね、私、歩き方もちょっと変だから・・・仙道さんは、私が帰る間、後ろを見ていて欲しいの。」
    「・・・うん。」
    「だから、さっきのは足が痺れただけで、私は・・・普通の女の子ってことに、して。」
    「・・・。」
    僕の困ったような目を見て、ユイさんは笑う。
    「わかってる。そんなこと言っても、なんにもならないよね。でも、お願い・・・。」
    「うん・・・わかった。」
    僕がもう一度頷くと、ユイさんは「それじゃ・・・」と言って、僕の体を回すように、腕に力を入れた。それを手伝うように回れ右をした僕は、何も考えられない頭の中で、空を見上げながら、彼女の為になることを探していた。

    背後へ集中した聴覚が、鞄を持ち上げるような音を拾うと、「あっ」という声がした。
    その刹那に、中身が入ったペットボトルが床に落ちる音がする。出会った時に僕が買った、お茶のボトルだろう。

    彼女が座っていたのは、酔いの為ではない。だから、もうお茶は必要ないはずだ。それでも、ユイさんは無言のままで、そのペットボトルを拾おうとした。ペットボトルを床に落としてから拾うまで、何秒か、何十秒か、数分か。もう、なにもかもが僕にはわからなかった。

    振り返って声をかけられない。彼女が言い出したこととはいえ、そのもどかしい時間は、あまりにも悲しく長かった。黒くくすんだ空が、日の終わりを告げていることだけが、僕の目に入っていた。

    あの時、背中越しに、何かを言えたのなら・・・。
    その一言を言うために1000円の男をやっているのに、僕はまだ、その言葉を見つけられずにいる。

    さようなら、ユイさん。愛や絆で、あなたの心が軽やかになりますように。

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    01:26 | トラックバック(0) | コメント(6) | オモイデ | Page Top


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    ■コメント


    今、このユイさんの話しを見て思い出しました。
    江頭2:50さんが言ったという言葉を。
    「僕は、お笑いと言う仕事をやっているけれど、生まれつき目が見えない人に空の青い色を伝えてあげる事ができない。そのくらいの芸人なんです。」。。。
    ちょっと違うかもしれないんですけど。。。
    僕も、仙道さんが探している言葉、探して生きたいと思います。
    【2006/10/06 08:15】 URL | ひろき #SFo5/nok [ 編集]

    なにも言えないですね。
    でも、ちょっとの間だけでも、気にしていたことを他人に話したことで、楽になれたのではないかと思います。仙道さん、いつもありがとうございます。

    あと、御存じのように台風が来ています。2、3日は台風17号による雨がくると思いますが、災害になるほどではないかと。ただ、明日あたりから風が強くなると思われます。16号はその後に...

    【2006/10/06 11:38】 URL | 貴樹 #- [ 編集]
    ■訂正させてください<(_ _)>
    古いデータを見ていたようです。現在、東京は大雨注意報が出ていますが、隣県では警報が出ています。十分に気を付けてください。明日は落ち着くと思われます。

    【2006/10/06 16:03】 URL | 貴樹 #- [ 編集]

    長編でしたね「ユイ」。
    このストーリーが気になって、ずっと追いかけてました。終わったんですよね、なんか淋しいです。
    ユイさんは心の奥底にしまおうとしていたものを、仙道さんに打ち明けることになった。
    それで彼女の気持ちが少し晴れた。
    それでいいと思います。
    女性は人に悩みを聞いてもらうだけでストレスを解消する特性があるようです。
    ですから、この日の彼女はかなり助かったのでは?
    そう思いたいですね。
    そうでなければ悲しすぎる・・。
    【2006/10/06 19:33】 URL | 次代のジェダイマスター #- [ 編集]

    >さようなら、ユイさん。愛や絆で、あなたの心が軽やかになりますように。

    ホントそう思います。
    こういう自分じゃどうしようもできない問題を抱えた人に出会うと、自分の悩みっていってることがしょうもなって思いますね。
    普通の女の子にしてあげれたら、言葉なんてなくても願いは叶ったんじゃないでしょうか。
    【2006/10/07 01:10】 URL | ゆうひ #AYRbcOxw [ 編集]
    ■コメントありがとうございます
    悲しいけど、優しい言葉ですね。空の明るさ高さを、伝えることができてもそれが幸せなのか・・・。考えさせられます。いつか、何かいい言葉を見つけることができたら、教えてください>ひろきさん

    ありがとうございます。ほんの数時間、話し込んだだけの間柄だからこそ、いろいろなことを語ることができたのでしょうか。それで楽になることができるのなら、1000円の男にも少し価値が見出せるのかもしれません。雨には、案の定降られてしまいました。>貴樹さん

    ユイ編、お付き合いくださってありがとうございます。私のような一時しのぎの話相手ではなく、本当に心を開ける相手ができたのなら・・・そう、思っています。今後ともよろしくお願いします>次代のジェダイマスターさん

    悩みに優劣なんてなく、その人が抱える問題はそれぞれその人にしかわからない重大さがある・・・と思っても、力になることができる悩みと、力になれない悩みというものは重さがやはり違う気がしますね。ユイさんがゆっくりと去っていくとき、こんなことで願いのカケラでもかなえてあげられたのか・・・なんて思いました。まだまだ、未熟者です>ゆうひさん。
    【2006/10/07 02:13】 URL | 1000 #- [ 編集]
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