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仙道緑(1000円の男)
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    ■2006/12/02(土) サユリ その2

    「へぇぇ。それ、かなり変わってるよ、仙道さん。ほら、試しにコレ食べてみてよ。」
    もう一度、僕の口の前までコーヒーゼリーが運ばれてくる。今度は本当に食べさせる気なのだろう。
    「・・・いただきます。」
    逡巡の後に、僕は口を開いてスプーンから直接差し出されたコーヒーゼリーを食べる。周りからは、公共の場で空気を読まないカップルの様に思われたかもしれないが、やむをえない。

    「どう。美味しいでしょう?」
    動物の生態を観察する学者さながらの怪訝な表情で、サユリさんはこちらを覗き込むように見ていた。
    「うん。美味しいね。」
    その場を繕う嘘ではなく、実際にそのコーヒーゼリーは美味しかった。コーヒーの微かな酸味と、甘すぎないクリームがシンプルながら精妙に整ったバランスで広がっていく。
    「じゃあさ、ふわーっと、こう、幸せな気持ちにならないの?」
    胸の辺りから手を広げて、サユリさんは頑張って自分の気持ちを表現しようとしていた。
    「うーん。美味しくないものを食べた時よりは、嬉しいよ。でも、ふわーっとまでは、こないなぁ。」
    「えー、そっかぁ・・・。」
    肩を落すという表現がぴったりくるくらい落胆して、サユリさんはもう一口ゼリーを口にした。

    「いや、あまり気にしないで。小さい頃からあんまり食に欲求が無い人間なんだ。」
    「そうなの?そういえば、痩せてるもんね、仙道さん。」
    「・・・これでも、少し太ったんだよ。一番痩せていた頃は、181cmで55kgだったからね。」
    痩せていると言われるのは少し悲しいのだが、口に出さずに会話を続ける。
    「うわ・・・。今は、何kgなの?」
    「65kgかな。多分これくらいが一番体調がいいと思う。」

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    ■2006/12/03(日) 衝動買い

    20061203192446
    かわいいスニーカーを見つけてしまったので、思わず買ってしまいました。

    仕事の時は革靴ですが、1000円の男の時だけはスニーカーを履くのです。この靴は、どんなドラマを目撃するのでしょう。ベッドの上までは、一緒にいられないのですけれど。

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    ■2006/12/05(火) サユリ その3

    「食べる欲求が無いなら、どんな欲求があるの?」
    予想通りといえば、予想通りの質問だ。
    「うん・・・そうだな。前は睡眠欲が大きかったんだけど、20代になってからはあんまり寝なくなったし・・・。」
    「ええっ?食べることと寝ることに関心がないなんて・・・人生の何割損してるのよ!」
    サユリさんの人生が何で構成されているのかを描きつつ、頭を振る。
    「よく言われるけどね。僕は、僕なりに幸せに近づこうとしているんだよ。」
    「ふーむ・・・。」
    最後の一口を食べ終えたところで、サユリさんは腕を組んで考え込んでしまった。
    「まぁ、今は僕のことはいいからさ。自分の事を考えてよ。例えば、この後何がしたいのか、とか。」
    「うーん・・・。」
    僕の問いに対して考えているのか、腕を組んだ瞬間から考え続けているのかはわからなかったが、サユリさんは僕の言葉を耳に入れずに、ひたすら考え込んでいた。
    サユリさんが何を考えつくのかはわからないが・・・大抵のことは一興の内だろう。とりあえずは、サユリさんに話しかけないように周りの人達を観察していた。

    「そうね。」
    「ん?」
    数分ほど経った所で、丸いテーブルの向こう側から、小さく声が聞こえた。
    彼女が得た結論はなんだったのだろうか、少し悲しげな表情が気にかかった。

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    ■2006/12/06(水) サユリ その4

    「仙道さんは、なんていうかな。こう、物事に淡白すぎるんじゃない?あんまり熱中するものがなさそう。」
    そんなサユリさんの推測が当たっているのか、僕自身もわからない。僕自身が熱中することを他人の尺度で正確に測れるのだろうか・・・そんな小理屈が言い訳の様に浮かぶのは、僕の悪い癖だ。そんな愚にもつかない文章よりも、ただ、彼女にそう思われたことが、一つの結論になるのだろう。

    「そうかな。そうかも。」
    お茶を濁すような僕の言葉は、サユリさんに届いていたのだろうか。彼女の口からは、テンポよく次の占い(?)が飛び出てきた。
    「だから、女の子をあんまり深追いしないで、よく逃がしちゃったりするでしょう?」
    「・・・。」
    これも、当たっているといえば当たっているし、そうでないともとれる。ただ、一つ一つの言葉を結構真剣に投げかけてくれるのが、意外にも少し嬉しかった。

    「だからね、もうちょっとこう、冷めた顔をしないで、今ある事に気持ちを集中して話さないと、ダメなのよ。」
    話がズバリ的中しているという前提で、サユリさんは話を続けているようだ。真剣に・・・と言われても、眼鏡の底から注がれる視線が少し恥ずかしくて、僕にしては珍しく照れてしまっていた。

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    ■2006/12/07(木) マリ

    「へぇ、なんでもしていいの。なんか、面白そうね。」
    パーマを当てた髪をくるくると指に絡ませて、マリさんは妖艶に微笑んだ。僕の説明を聞いている様子を見る限りでは好感触で、今日のお客さんはこの人かな・・・と、心の底の方が高揚で熱くなってきているのを、自分で実感していた。心を麻痺させて話しかけているとはいえ、やはりお客を捕まえるまでが一番疲れる。

    「でも、ごめんなさい。今日は、ダメなの。」
    あまり悪くなさそうに、マリさんは謝る。胸の前で合わせた手は、手の平がくっつかずに、人という字を書いているようだった。
    「今日は、弟の誕生日なのよ。」
    僕が理由を問いただす前に、マリさんは口を開く。
    「これから家に帰って、一緒にケーキを食べなきゃいけないから、今日は無理なの。プレゼントだって、買ったんだから。」
    そう言って、マリさんは手に提げた小さな袋を僕の見えるところまで持ち上げた。口を挟む暇なく挙げられていくマリさんの口上に、僕は肯くしかなかった。雑誌の写真を立体的にしたかのような、煌びやかな格好と、弟思いの一面が可愛いギャップになっていて、少し面白いな・・・なんて事が、頭の片隅で文章にされていた。
    「そう。じゃ、弟さんが待ってるでしょうから、早く帰ってくださいな。」
    僕が片手を横にあげて駅へと促すと、マリさんは嬉しそうに笑う。
    「うん。また会えたら、その時はよろしくね。」
    歩きながら投げた言葉を受け取って、僕は目を閉じて無言で頷く。1秒ほど後に目を開けたときには、既にマリさんは振り返って家路へと向かい始めたところだった。少し急ぎ足の後姿を、僕はそこそこ満足して、見つめていた。

    さようなら、マリさん。僕は誕生日パーティーの話題くらいには、なったでしょうか。

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    ■2006/12/08(金) タイトルなし

    20061208084408
    最近、職場や自宅でよく水を飲むようにしています。トイレが近いのがちょっとした悩みですが、肌の調子や体調が多少はよくなっている気がします。

    他も、お姫様抱っこの件で懲りたので筋トレをしたりと、少しずつ自分の体への考え方が変わってきているのを実感しています。
    ずっと一人でいるのならなんでもいいのでしょうが、時には人前で肌を見せたりもしますので、せめて相手にがっかりさせない…そんな考え方で体を作ってみようかなと、近頃は思っています。

    もっとも、これは少し女性らしい考え方なのかもしれません。かつて仙道になる前の一人の男性としての僕は、人に肌を見せる為に体調管理をするなんて、考えた事もありませんでした。(これは、僕だけなのかもしれませんが)
    女性に対しての事を考えていくと、女性らしい考え方になるのは、少し不思議な感覚です。
    08:44 | トラックバック(0) | コメント(2) | エトセトラ | Page Top


    ■2006/12/09(土) サユリ その5

    話の対象を僕に移してから、俄然サユリさんの口の回りがよくなった。
    「仙道さん、自分の話になると、口数が少なくなるよ。」
    傾いた主導権のシーソーの上から、サユリさんはあけすけに話しかけてくる。
    「そうだね。質問されるのは慣れっこだけど、自分のことは語っていても楽しくないかな。沢山の人に色々なことを聞かれすぎちゃったし、新鮮味がないんだ。」
    「そうなの?さっき私がしたような質問も、前に聞かれたことがあるの?」
    意外という顔で、サユリさんは聞き返してくる。そのレンズの奥に見える少し歪んだ世界が、一瞬水の中にいるような気分にさせる。
    「・・・まあ、ね。質問をされれば、大抵のことには答えるけど、僕はそれよりも、サユリさん自身の話を聞きたいよ。さっきの、食べ物の話は失言ってことで、忘れて。」

    「でも、私だって仙道さんの話を、聞きたいよ。自分の話なんて、面白くないもの。そもそも、私自信が面白くない子だし、仙道さんだって退屈すると思うよ。」
    少し感情を前に出して、サユリさんは振り絞るように訴えた。
    「そんな退屈かもしれない話を聞くのが、好きなんだけど・・・あなたがそうしたいというのなら、それに従うよ。」
    取り繕うとか、その場を凌ぐとかではなく、それは本心からの発言だった。とうに安値で売り払った拒否権を偲ぶ気持ちはなく、サユリさんのことを知る機会が減るのは、実に残念なことだった。

    「似たもの同士、なのかもね。」
    サユリさんは、ふいにそんな言葉を零す。
    「二人とも、自分のことより相手の事を知りたがるんだから。話が中々進まないのよね。・・・ごめんね。でも、私は本当に何にも無い女だから、自分の何を話していいのか、わからないの。」
    そこで謝られたら、僕の負けだろう。否定と、少しだけ降参の意味を込めて、首を振る。
    「同じような人生を送っても、全く同じような考え方をする人はいないんだよ。何も実体験を聞きたいんじゃなくて、そういう考え方を少し教えてくれればな・・・って、思っただけだよ。だから、僕にとってつまらない人なんて、いないのと同じだよ。」

    少し考えてから、サユリさんは頷く。自分の中で、僕の言葉を反芻していたのだろう。
    「お上手ですこと。」

    僕達は、デザートを食べ始めた頃よりは本音で話している。
    だけど、二人の距離は近づいているのかどうかは、微妙な気がしてならなかった。

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    ■2006/12/11(月) サユリ その6

    とっくに空になっていたコーヒーゼリーと、冷めたカフェオレがやけに目に付くようになってきたのは、店内に少し長居をしすぎかなと、僕が気にし始めたからなのかもしれない。
    会話が途切れた僕達の間に流れる空気は、サユリさんの目にはどう映っているのだろう。さっき、最後に言った言葉を、微笑んで返せばよかったのかな。僕は頬に肘をついてそんなことを考える。
    「どうか、したの?」
    僕の視線が煩かったのか、サユリさんは不思議そうな顔で尋ねてきた。
    「いや、唇にコーヒーゼリーのクリームがついてるからさ。」
    「えっ、嘘でしょ?」
    そう言って、サユリさんはペーパーナプキンを手に取る。返答が「本当に?」ではなく、「嘘でしょ?」だったということは、自分のテーブルマナーに自信があるということなのか・・・。そう思いながらも、彼女が口を拭く前に種明かしをする。
    「うん、嘘。ちょっと、リアクションを見てみたかっただけ。」
    「うわ・・・やな性格。」
    サユリさんがわざとらしく怒るのを見て、僕はあえて何も言わずに、ただ、にっこりと笑う。
    「その笑顔は、凄くいい人みたいなのに・・・。」
    「まぁ、ね。騙されないように、気をつけてね。」

    「ねぇ、仙道さん。」
    「はい、なんでしょう。」
    「私は、特に変わった経歴の持ち主でも、美人でも、頭がいい訳でもありません。」
    「・・・。」
    僕が、口に任せて何かを言おうとしたのを、サユリさんは機を制して遮る。
    「でもね。そんな私と話している仙道さんは、なんだかとても楽しそうで。それが、私はとっても嬉しいです。」
    そして、サユリさんはぺこりと頭を下げた。
    「ありがとう、仙道さん。」

    黒い髪で渦を巻くつむじが見えると、僕は胸の内側に暖かい波がたどり着いたのを感じた。意外なタイミングの意外な一言は、僕を少なからず動揺させた。
    「あ、いや、その、お礼を言われることじゃ、ないんだよ。僕も個人的に楽しんでやっていることだし・・・。」
    少し泣きそうになっている。そんな自分の感情に戸惑いながら、しどろもどろに返事をする。
    「仙道さん、私の今のこの気持ちは幸せってやつなんだよ。」
    サユリさんは、自分の胸に手を当てて、僕を見ながら微笑む。僕は、照れくさいのと、店内の明かりが眩しいのと、そんなポーズをとりたかったから、帽子を深く被り直す。
    「うん、まぁ・・・俺も幸せかな。」
    一人称が変わったのは、恥ずかしさのせいだろう。これじゃ、結局経験を積んでいるのかいないのか、わからないじゃないか。ぐるぐると頭の中に自問が浮かぶ。
    「よかった。不感症じゃ、ないんだね。」
    そう言ったサユリさんの顔も、僕と同じようにちょっぴり泣きそうになっていた。
    別れ話も、不幸な話もしていないはずの二人なのに、涙が出そうな顔で、感情を零して笑いあう。ちょっと変わった二人は、名も知らないBGMを一曲だけ聴いて、その喫茶店を後にした。

    コーヒーゼリーの味は文章でしか思い出せないけれど、あの時の気持ちは忘れられません。さようなら、サユリさん。お互い、手を伸ばして、ね。

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    ■2006/12/12(火) リツ

    「凄いね。本当に、真っ黒。」
    少し癖のある僕の髪の毛を捻るようにいじりながら、リツさんは面白そうに微笑んだ。僕はといえば、ベッドの上でリツさんが自分の膝を叩いたのを見てから、頭をリツさんの膝の上に預けて、テレビに延々とリピートされる環境ビデオのイルカをぼんやりと眺めていた。
    「昔一回だけ脱色したんだけど、通常の倍くらい時間をかけても殆ど色が変わらなかったから、もう色を変えるのは諦めたんだ。」
    そんな話を聞いてか聞かないでか、リツさんは無心に僕の髪の毛をいじったり、頭を撫でたりしている。僕は拾われたての野良猫の様に、適切なリアクションを返せないまま、なすがままに頭を撫でられていた。

    握りこむようにセットして軽いパーマのようにしたり、襟足にかかる後ろ髪をつまんだりと、リツさんは少し大きすぎる1000円の人形に対して、無言でうつむきながら、悪戯のような、愛撫のような行為を飽きずに繰り返していた。
    「頭、重くない?」
    自分なりに頃合を見計らって、尋ねてみる。なにせ、こんな体勢を取るのは幼少の頃以来なのだ。相手の立場に立って考えてみようとしても、なかなか勝手がつかめない。
    「うん、大丈夫。」
    リツさんの返事はそれだけだった。一人の世界を邪魔されたくないのだろうか。僕は青く光るテレビの画面を見ながら、頷いた。

    壁にかけられた薄型テレビの中では、イルカやクジラが水しぶきをあげて海中へと潜っていく。星の底へと繋がるあの青く暗い水の闇よりも、リツさんの世界は深いのだろうか。

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    ■2006/12/13(水) リツ その2

    人に髪の毛を触られたまま、自分が眠りにつくとは思えなかった。目を閉じていてもリツさんの手の影は動き続けていたし、人の膝に頭を乗せているという行為に少なからず気を使ってリラックスは出来るないだろう。とはいえ、室内には二人の呼吸の音と、環境ビデオの細波の音だけが響いていると、少しずつまぶたが重くなってくる。
    「脚、痺れない?」
    もう一度、顔を天井へ向けて、リツさんに視線を合わせる。今度もリツさんは首を振っただけで、僕の頭の上に手を乗せて静かに俯いていた。顔を隠す長い髪で作られた、影のせいだろうか。僕は一瞬、リツさんになんの表情も無いような気がして、背筋に冷たいものが走る。気のせいだと言い聞かせながら、再びテレビの方を向くと、再び二人とも言葉を発しないまま時が流れた。

    やがて、青い海岸に打ち付けられた波で砂が砕ける音以外に、微かだがリツさんから鼻をすするような音が聞こえてきた。僕は閉じていた目を開けて、距離にして1mも離れていないリツさんの顔を見ようか悩んだが、ふと、先ほどのリツさんの空虚な表情を思い出し、少し体を緊張で固くしただけで動けなかった。

    リツさんは、泣いているのだろうか。泣こうとしているだけなのだろうか。
    一度、乱れたスカートを直す手に入った力は、少し強すぎるように思えた。


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    ■2006/12/15(金) タイトルなし

    傘の中、コンビニのガラスにあんまりに疲れた顔だったので、思わず一枚。
    目が写らないと、ちょっと怖い顔ですね。
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    ■2006/12/17(日) ミカ

    急ぎ足で行きかう人たちの靴音が、電車のベルを薄めていく。少し苛立たしげな駅員の声が、ダイヤが終りに近いことを仄めかしている。僕は、駅の中に硬く聳え立つ柱にもたれかかって、ミカさんから預けられた体重を受け止めていた。
    「よく、終電が近くなるとカップルが駅でこうやってるのを、通りすがりに見てたけど。」
    「うん。」
    「今、やっとその気持ちがわかったよ。寂しいものなんだね。お別れって。」
    数十分前まで視線よりも頻繁に絡み合っていた唇はグロスがすっかり落ちていて、それがかえって僕の背骨の先をくすぐる。

    「ねぇ、仙道君も、寂しいのかい?」
    「うん、もちろん。」
    そう、即答できるくらいには、僕は人生に慣れはじめていた。
    「じゃあ・・・連絡先を、教えてよ。」
    順番にカードが切られる七並べの様に、ミカさんも他の人と同じような結論に至った。生憎なのは、僕がその先のカードも沢山持っていることだろう。
    「こうしてお別れがあったほうが、きっといい思い出に終わるんだよ。また偶然出会えた方が、ドラマチックなんだしさ。」
    「・・・。あたしといて、つまらなかった?」
    「沢山話せて、楽しかったよ。」
    少し小声で、ミカさんの耳の中に忍ばせるように声を届ける。

    「じゃあさ、ここでキスするか、連絡先を教えるか、二つに一つなら、どうする?」
    次々と改札口へ吸い込まれていく人達をチラリと見て、ミカさんは条件を提示してきた。負け戦を肌で感じているのだろう。少し悲しげに笑うのを見て、僕の心がチクリと痛む。

    僕は頭を振って、唇をミカさんに近づける。誰に見られても、構わない。たとえ渋谷の交差点の真ん中でも、僕はキスできるだろう。照れがあっては女性に声をかけても話を聞いてくれない様に、1000円の男としての僕は、日常から一歩はみ出すスイッチを頭の中に作ってある。

    「わかった、もう、いいよ。」
    唇が触れ合う距離より若干の猶予を残して、ミカさんは降参の旗を揚げた。僕が目を開けて再び距離をとると、恨めしげな目で僕を見上げるミカさんの顔が見えた。
    「次会ったら・・・また、よろしくね。」
    僕を困らせない、優しい台詞を残すと、ミカさんは小さく手を振って去っていった。手を後ろに組んで鞄を持つ後姿は、ひょっとすると、後ろから手を引いてほしい気持ちが少し混じっているのかもしれない。財布から定期を取り出す手は、まだミカさんの頬の感覚を覚えていた。

    さようなら、ミカさん。まだ、どこかで僕を探していますか?

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    ■2006/12/18(月) リツ その3

    後ろ身頃に、赤い警戒ランプを感じて、僕はまどろみから意識を引き起こす。どうやら、数分間だけうとうとしていたようだ。改めて見上げなくても、リツさんの顔が僕を見ているのが、頬をじりじりと焦がす視線でわかる。
    キスをすれば、この空気が変わるかもしれない。そんな、Mr.childrenの歌詞のような事を安易に思い立ったのだが、「頭を上に向かせて、体を起こして、キスをする」という、特に難しいところの無い簡単な動作が、垂れ下がったリツさんの髪の毛が重力の存在を強調しているようで、なかなか起こせなかった。

    「寝てて、いいんだよ。」
    僕がまどろんでいた事を、リツさんは気付いていたようだ。声をかけられたことで、僕は魔法が解けたようにリツさんに視線を合わせて、リツさんの顔を見る。どこか悲しげな表情ではあったが、僕を見下ろしていたのは、感情を込めて話していた頃の、見覚えのあるリツさんだ。さっきまでの表情は、やはり気のせいだったのか・・・そう思いながら、僕は口を開く。
    「いや・・・十分、堪能したよ。ありがとう。」
    上半身を起こして、右手を軸にリツさんの方を向く。合わせるつもりはなかったのだが、丁度鏡を前にしたように、二人は同じポーズになった。

    濡れたまつ毛を、人差し指の背ですくう。少し不器用な僕の左手が、そのまま頬を包んだ。
    「泣いてた・・・よね。」
    質問を受けても、リツさんは中々口を開かなかった。

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    ■2006/12/19(火) リツ その4

    「何か、悲しいことあったの?」
    そんな質問に、リツさんは答えようとはしなかった。僕の声など聞こえなかったかのように、静かに瞬きだけをして、蝶の羽の様に微かに空気をかき混ぜていた。
    「・・・。」
    口を開いて言葉を捜す僕を見ると、リツさんは少しため息をして、下を向く。その生暖かい息が、僕の鎖骨に吹きかかる。
    リツさんは姿勢を正して膝を揃えると、僕の肩に手を当てて、少しだけ力を入れる。その意図を汲んだ僕はゆっくりと後ろに倒れて、布団へと身を落とす。再び、視界には見飽きた天井が映る。
    「あ・・・。」
    もう一度口を開いた僕に、リツさんのキスが進入してきた。僕の口を塞ぐためなら、手段を選ばないという意思が感じ取れる、ねじ込むような、深いキス。

    さっきまで僕が思っていた事を、そのままされているじゃないか。そんなことを思いながら、なすがままに身を任せる。大人しくはできないが、体を求められることに抵抗することも無い。TVの中のクジラが大きく跳ねて、深海へと潜っていくのと同じ頃に、僕達は、言葉の無い時間へと、沈没していった。お互いを求めている間にずっと繋がれていた手が、リツさんの答えだったのだろうか?最後まで、それが言葉として現れることは、無かった。

    さようなら、リツさん。もう、水面にはあがってこれましたか?

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    ■2006/12/21(木) ミカ

    「仙道さんって、口が小さいのね。」
    僕の口を見ながらそう言った女性の名は、ミカさんという。
    「ん?そうなのかな。」
    それが良い意味なのか悪い意味なのかわからずに、僕は自分の唇をなぞる。男が自分の口元を見るのは、無精ひげが生えているか、青海苔が付いていないかの確認くらいしかないのだと、思っていた。
    「絶対そうだよ。私が言うんだから、間違いないよ。」
    どんな自信があってかの発言かはわからいが、僕は適当な相槌で、場を繋ぐ。

    「でもね、口が小さい人って、性格が悪いんだって。」
    さも嬉しそうに、ミカさんは僕の耳元にささやく。これが、流行の小悪魔的というものなのだろうか。性格が悪いのはどっちなのだか・・・そんな言葉を飲み込んで、代わりにミカさんの手を握る。
    「手が暖かい人は、心が冷たいんだっけ?」
    「うん・・・。あ、手、暖かい!」
    手を握られたことに少し驚いたのか、気付くまでに若干時間がかかったが、またしてもミカさんは嬉しそうに笑う。僕の性格が悪いことが、何故そんなに嬉しいのかはわからないが、その場の笑顔が得られるのなら、それでよしとしよう。


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    ■2006/12/22(金) コート

    寒くなってきましたね。なにやら聞き慣れないウイルスも流行っているようです。
    皆様、お体には気をつけて下さいね。

    写真は、数年前から愛用しているロングコートです。夜道を歩くと怖がられる以外は、お気に入りの一品です。

      



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    ■2006/12/23(土) タイトルなし

    なかなか更新ができそうにないので、自分の裸を安売りでもしておきます。

      



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    ■2006/12/25(月) セイヤ

    本来は休日だった日でさえも、僕を縛っていたスーツのネクタイをほどくと、少し首の周りが冷える。僕はいつもコートとペアでつけているマフラーを簡単に両肩へとかけて、首の周りの冷たい空気を抱きしめる。
    街は、雪が降るわけでもなく、中空にソリが見えるわけでもなかったが、誰かの手で大切に作られた電飾が、今日を特別な日なのだと教えている。
    手に乗ったネクタイをぶっきらぼうに鞄にしまうと、僕は駅へ向かう疲れた足の上で悩んだ。

    今日という日は、誕生日を除けば、おそらく他のどんな日よりも、思い出に残りやすい日なのだろう。街はすっかりその気だし、今年の東京は気候ですら甘い気がする。それにひきかえ、ぴかぴかに光ったガラスに映ったのは、疲れきった一介のサラリーマンだ。

    ちょっと、舞台に上がるにはみずぼらしいかな。

    そう、ひとりごちて、僕は定期券の入った財布を胸のポケットから取り出した。仙道は、イブとは縁がないようだ。いつか、休日がまたイブと重なる日・・・そして、急な仕事が入っていない日。その日まで、彼には聖夜はお預けのようです。

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    ■2006/12/26(火) アメノヒ

    空気の汚れを洗い流し、道を走る車輪の音に箔を付ける。
    子供の頃から、雨の日は好きだった。今、携帯に降りかかる雨が少しだけ憂鬱なのは、弱った体と、靴紐の様にきつく詰まったスケジュールのせいだろう。
    それも、多分、今日までの話。ようやく、少しゆっくりできそうです。

      



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    ■2006/12/27(水) ミカ その2

    「仙道さんはさ。自分で自分の性格は悪いと思う?」
    僕が握った手を強く握り返して、ミカさんは見上げるように尋ねる。風と重力に逆らったまつ毛が、重たそうに上下する。
    「うーん、まぁ、いいとは言えないかな。」
    「えー、やっぱりそうなんだ!」
    いいと言っても厚かましいし、悪いといえば信じられる。詰んでしまった将棋のような問いに対して、僕はせめて面白そうな解答を選んでみた。

    「性格が悪いって、例えばどんな事するのさー。」
    物騒な質問のようだが、ミカさんは明らかに楽しんでいるように見える。たとえ性格が悪いと僕が言っても、目の前の優男を恐怖の対象としては見ていないのだろう。
    「そうだなぁ。例えば・・・」
    そう言って、僕はミカさんの側へとにじりより、腰と腰がくっつく位の距離まで近づく。

    「今日はずっと、この距離で話すとか?」
    唇を耳の後ろに移動させ、少しトーンを落として声を出す。上唇が微かに耳たぶに触れたり、口から息が漏れるたびに、ミカさんは肩をすくめて楽しそうに嫌がる。親戚の子供と遊んだ時も、くすぐって遊んだっけ・・・なんて考えが浮かんだが、とても口には出せなかった。


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    ■2006/12/28(木) ミカ その3

    僕は鼻や頬でミカさんの首の後ろ辺りをゆっくりと往復しながら、次に何をしようかと考えていた。このまま倒れこむのも悪くは無いが、もう少し遊んでいたい気もする・・・そんな事を思いながら、また首筋の匂いを嗅ぐ。

    「やっぱり、いじわるだ・・・。」
    「うん。いじわるが嫌いなら、嫌いって言ってね。」
    「・・・。」
    僕は手の平を縦になぞったり、細い指を柔らかく包んだりして、好き放題にミカさんの体をいじりながら、その表情を一つひとつ読み取っていた。

    「もう・・・。」
    呆れるように呟いて、ミカさんが僕の腰に手を回したときに、思わず僕の体が震えてしまったのは、一生の不覚だろう。意識していれば我慢できたものを、不意に僕の弱点であるわき腹付近を腕が通過したので、思わず体が反応してしまったのだ。
    「・・・あれ、仙道さん、もしかして・・・。」
    そう言ったミカさんの目は、暗い室内で怪しく光った気がする。僕が噛み付くように首筋にキスをするよりも早く、ミカさんの両手は5本の指を尖らせて、僕のわき腹へあと数ミリのところまで到着していた。
    「ごめん。僕が、悪かった。落ち着こう。」
    僕はこれから襲い掛かる悪寒を予知して、背中を押されたかのような姿勢になりながらも、ミカさんの耳元で懇願する。不安を与えるといけないので、ミカさんの手を強く掴むこともできずに、僕の手は宙を漂っていた。

    「ううん。仙道さんは、何も悪いことして無いよ。安心して。」
    眉毛を下げて、ミカさんは悲しそうに首を振った。
    「本当に?」
    「うん、本当。その代わり、私がいまから何をやっても、悪くないよね?」
    そんな口上を言い終わるよりも早く、彼女の人差し指は僕のあばら骨の下へと着地をした。

    攻守、交替。二人の悪戯が向かう先は一緒なのかもしれないが、それでもコースは大きく変わってしまった。こんなはずじゃなかったのに・・・僕は、体の自由を奪われた状況で、そんな言葉を浮かべて、身を捩った。

    さようなら、ミカさん。お互いの趣味が合って、なによりでしたね。

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    ■2006/12/29(金) 

    女性の言葉を借りれば、「少年の様な体」を好きな人がいるのも事実なのですが、細いこの腕をなんとかしたくて、筋トレを続ける毎日です。

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    ■2006/12/31(日) ソウカツ

    エイプリルフールだと思われたくなくて、四月二日にblogを解説してから数ヶ月。仙道という別の名前を持ってから初めての大晦日を迎えました。
    色々な思い出が枕の中に置いていかれるのがもったいなくてつけ始めたブログが、こんなに長続きするとは思っていませんでした。これも、皆様の「面白かった」というコメントのおかげです。
    この一年、僕は肉体的にも精神的にもいい意味で変わることができたと思います。

    一週間に一度程度の女性との出会いを少しずつ切り出して、毎日続けていったり、同じ女性のエピソードを別の名前でいくつかに分けたりと、色々引き延ばしをしたりしていますが、来年もなるべく多く更新しようと思っています。
    皆様、よいお年を。

    仙道緑

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